カルチャー公開 データ取得日

洋画の興収シェアの低下は、本数が減ったのではなく1本あたりの興収が下がっていた(映連の統計 2000〜2025年)

洋画の興行収入(興収)のシェアは、日本映画製作者連盟(映連)の統計で、2000年の68.2%から2025年の24.4%まで下がっている。

この記事で確かめたのは、洋画のシェアが下がったのは、公開本数が減ったからなのか、1本あたりの興収が下がったからなのかという点だ。調べる前の編集部の予想は、「本数の減少よりも、1本あたり興収の低下のほうが大きいのではないか」というものだった(根拠はまだ確かめていなかった)。映連の過去データ一覧の2000〜2025年を使い、本数・興収・1本あたり興収(興収÷本数)を邦画と洋画に分けて並べた。データの取得日は 2026-10-01 である。

答えは、予想の側だった。洋画の公開本数は減っておらず、5年ごとの平均で見ると2000〜2004年の年346.4本から2020〜2025年の年526.8本に増えている。1本あたり興収は同じ期間に3.75億円から1.03億円へ、約4分の1に下がった。1本あたり興収は、映連の表に載っている値ではなく、年間興収を公開本数で割って自分で作った値である。

発端: 「邦高洋低」という言い方

映画情報サイトの MOVIE WALKER PRESS は、2014年1月29日の記事(2013年分の映連発表を伝えたもの)で、邦画と洋画のシェアを「邦高洋低」と書いている。同じ記事は、洋画の公開本数が2012年の429本から526本に増えたのに、興収10億円を超えた洋画は1本しか増えず、「アベレージの低下も目立った」とも書いている。

つまり、「邦画が強く洋画が弱い」という見方と、「本数は増えたのに平均は下がった」という見方は、2013年分の時点ですでに記事になっていた。ここで確かめたいのは、それが2013年だけの話なのか、2000〜2025年を通して言えるのかである。この記事では、この1本の記事以外に「世間ではそう言われている」という出典は確認していないので、世間一般の認識については書かない。

洋画の公開本数は、減っていなかった

映連の「過去データ一覧」には、年ごとの公開本数、興収、シェアが邦画・洋画に分けて載っている。2000年からは興行収入での発表で、1999年以前は配給収入での発表なので、この記事は2000年以降だけを使う。各年の邦画と洋画の合計が資料の合計欄と一致すること、資料のシェアが興収から計算し直した値と一致することは、26年分を確かめた(2010年だけ、興収の合計が1百万円ずれている。四捨五入の範囲とみられる)。

5年ごとにまとめると、次のとおりになる(2020〜2025年だけ6年。本数と興収は1年あたりの平均、1本あたりは期間の興収の合計÷本数の合計)。

期間 洋画 本数/年 洋画 興収/年(億円) 洋画 1本あたり(億円) 邦画 本数/年 邦画 興収/年(億円) 邦画 1本あたり(億円) 洋画シェア
2000〜2004年 346.4 1,300 3.75 290.6 664 2.28 66.2%
2005〜2009年 376.8 966 2.56 409.2 1,035 2.53 48.3%
2010〜2014年 438.0 828 1.89 521.8 1,169 2.24 41.5%
2015〜2019年 571.0 1,012 1.77 617.4 1,317 2.13 43.5%
2020〜2025年 526.8 542 1.03 614.2 1,493 2.43 26.7%

洋画の本数は、2000〜2004年の346.4本から、2005〜2009年に376.8本、2010〜2014年に438.0本、2015〜2019年に571.0本と増え、2020〜2025年は526.8本だった。2000〜2004年と比べて、2015〜2019年は約65%、2020〜2025年は約52%多い。洋画のシェアが下がった期間に、本数は減っていない。

年別に見ても、洋画の本数が最も少なかったのは2010年の308本で、コロナ禍の2020年(511本)と2021年(469本)も2000〜2004年の水準(335〜362本)を上回っている。2020年の洋画は、前年(589本)より13%少ないが、興収は前年の1,189.9億円から340.1億円へ71%減った。

一方、1本あたり興収は、2000〜2004年の3.75億円から、2005〜2009年に2.56億円、2010〜2014年に1.89億円、2015〜2019年に1.77億円、2020〜2025年に1.03億円と、期間ごとに下がっている。

下のグラフは、洋画の公開本数と1本あたり興収を、2000〜2004年の平均を100とした指数で並べたものである。この指数で並べたグラフでは、本数は2025年に176、1本あたりは2025年に29.2になっている。本数の指数は、2011年までは89〜117で、2012年に124、2013年に152になった。1本あたりの指数は、2012年に41.6まで下がり、2013〜2019年は39〜54、2020〜2021年は18〜19、2022年以降は27〜35である。

洋画の公開本数と、1本あたりの興収(興収÷本数)を、2000〜2004年の平均を100とした指数で年別に並べた折れ線。公開本数は2000〜2011年は89〜117の間で、2012年に124、2013年に152、2025年に176。1本あたり興収は2002年の110が最大で、2012年に42へ下がり、2020年は18、2025年は29。
単位: 指数(2000〜2004年の年平均=100。公開本数は346.4本、1本あたり興収は3.75億円)。1本あたり興収は洋画の年間興収÷公開本数で、自分で作った値。期間: 2000〜2025年。出典: 日本映画製作者連盟「過去データ一覧」(2026-10-01 取得)の値から自分で算出

本数と1本あたりのどちらが効いたのかを、計算で分ける

本数と1本あたりが両方動いているので、どちらがシェアに効いたかを計算で分けてみた。2000〜2004年を基準にして、次の置き換えを試した。

  • 洋画の1本あたりだけを基準(3.75億円)に戻し、本数は実績のままにする。
  • 洋画の本数だけを基準(346.4本)に戻し、1本あたりは実績のままにする。
  • 洋画の興収を基準(年1,300億円)のままにし、邦画は実績にする。

邦画は、どの計算でも実績の値を使っている。基準の期間(2000〜2004年)の洋画シェアは66.2%である。

期間 洋画シェア(実績) 洋画の1本あたりだけ基準に戻す 洋画の本数だけ基準に戻す 洋画の興収を基準のまま(邦画は実績)
2005〜2009年 48.3% 57.7% 46.2% 55.7%
2010〜2014年 41.5% 58.4% 35.9% 52.7%
2015〜2019年 43.5% 61.9% 31.8% 49.7%
2020〜2025年 26.7% 57.0% 19.3% 46.5%
2025年 24.4% 52.5% 15.4% 38.5%

2015〜2019年を例にとると、洋画のシェアは実績で43.5%、1本あたりだけ基準に戻すと61.9%、本数だけ基準に戻すと31.8%になる。1本あたりを戻すと基準の66.2%に近づき、本数を戻すとかえってシェアは下がる。本数が増えた分は、洋画の興収を押し上げていない。洋画の年間興収は、2000〜2004年の1,300億円に対し、本数が65%多かった2015〜2019年でも1,012億円だった。

2020〜2025年と2025年単独でも同じ向きである。1本あたりを基準に戻すとシェアは57.0%(2025年は52.5%)になり、本数を戻すと19.3%(2025年は15.4%)になる。

これは計算上の置き換えで、「本数がこうだったら1本あたりもこうなっていた」という関係は考えていない。たとえば、本数が増えると1本あたりが下がるという関係があるなら、2つを独立に動かした計算は現実の説明にならない。ここから言えるのは、公開本数の減少ではシェアの低下は説明できず、1本あたり興収の低下を戻した場合にだけ、シェアが基準に近づく、というところまでである。

編集部の予想は、2000〜2025年の5年ごとの値と、この置き換えの計算の両方で支持された。

この計算では、シェアの低下の一部は、洋画の側ではなく邦画の側の動きでも起きている。洋画の興収を基準のままにして邦画だけを実績にすると、2015〜2019年の洋画シェアは49.7%、2020〜2025年は46.5%になる。基準の66.2%からの下がり幅のうち、(邦画の増加を先に反映する順で分けると)2015〜2019年では16.5ポイントが邦画の増加の分、6.2ポイントが洋画の減少の分にあたる。

1本あたりの低下の大半は、10億円を超える洋画の本数の減少だった(概算)

1本あたりが下がった中身を、もう少し分けた。映連の「興行収入10億円以上番組」(a00010 で使った資料と同じもの)から、洋画の10億円以上の本数と興収の合計を取り、年間の洋画興収との差を「10億円未満の洋画」とした。この差引は、年の統計と10億円以上番組という別の表を引き算した概算である(10億円以上番組の値は各年1月の記者発表時点のもの)。

期間 10億円以上の洋画 本数/年 同 興収/年(億円) 10億円未満の洋画 本数/年 同 興収/年(億円) 同 1本あたり(億円)
2000〜2004年 29.8 963 316.6 337 1.06
2005〜2009年 25.6 701 351.2 265 0.75
2010〜2014年 20.0 577 418.0 251 0.60
2015〜2019年 22.6 783 548.4 229 0.42
2020〜2025年 10.3 312 516.5 230 0.45

洋画の年間興収は、2000〜2004年の1,300億円から2020〜2025年の542億円へ、758億円減った。この758億円の減少額の内訳は、10億円以上の洋画の分が651億円(約86%)、10億円未満の分が107億円である(1本あたりの低下そのものの内訳ではない)。10億円以上の洋画の本数は、年29.8本から10.3本に減っている。10億円以上の作品1本あたりの平均は、32.3億円から30.2億円で、期間によって27〜35億円の間にあり、大きくは動いていない。

10億円未満の洋画は、年316.6本から516.5本に増え、1本あたりは1.06億円から0.45億円に下がっている。

したがって、洋画の1本あたり興収の低下は、10億円を超える洋画の本数が減ったことと、10億円未満の洋画が増えて1本あたりが薄まったことの両方から成っている。金額で見れば前者が大半を占める、と読める。10億円を超える洋画がなぜ減ったのかは、映連の資料には書かれておらず、この記事では確かめていない。

邦画は、本数が増えても1本あたりが下がらなかった

邦画の本数は、2000〜2004年の年290.6本から2020〜2025年の年614.2本へ約2.1倍になった。この間の1本あたり興収は、2.28億円から2.43億円で、期間ごとに2.13〜2.53億円の間に収まっている。洋画と同じように本数が増えているが、1本あたりは下がっていない。

邦画の年間興収は664億円から1,493億円へ2倍以上になり、洋画は1,300億円から542億円へ減った。邦画のシェアが洋画を上回ったのは、2006年(53.2%)が最初である。2007年は47.7%に戻り、2008年から2025年までの18年は邦画が上回っている。

大ヒット作の影響と、読むときの注意

1本あたりは、少数の大ヒット作で動く。 洋画で最も興収が高かった作品の影響を見るため、各年の1位の1本(10億円以上番組の1位)を除いて、期間ごとの1本あたりを計算し直した(1位を除いた年間興収÷(本数−1)の期間合計)。

期間 洋画 1本あたり 1位を除いた洋画 1本あたり 邦画 1本あたり 1位を除いた邦画 1本あたり
2000〜2004年 3.75億円 3.35億円 2.28億円 1.82億円
2005〜2009年 2.56億円 2.33億円 2.53億円 2.24億円
2010〜2014年 1.89億円 1.60億円 2.24億円 2.08億円
2015〜2019年 1.77億円 1.57億円 2.13億円 1.93億円
2020〜2025年 1.03億円 0.88億円 2.43億円 2.05億円

洋画は、1位を除いても3.35億円から0.88億円へ下がり、向きは変わらない。年別では、洋画の1位が203.0億円だった2002年や173.0億円だった2003年の1本あたりが高く、2025年の邦画(2.99億円)は、1位と2位の2作で約587億円ある年である。年ごとの1本あたりは大ヒット作で動くので、この記事の結論は年別の値ではなく、5年ごとの平均で見ている。

公開本数の数え方は、確かめていない。 映連の過去データ一覧には、公開本数の範囲(上映の規模や形態)の注記が見当たらなかった。洋画の本数が2012年から増えている(2011年358本、2012年429本、2013年526本)点が、数え方の変更によるものかどうかは分からない。ただし、2012年より前だけでも向きは同じである。2000年と2011年を比べると、洋画の本数は362本から358本とほぼ同じで、1本あたりは3.22億円から2.28億円に下がり、洋画シェアは68.2%から45.1%に下がっている。

2020年と2021年。 洋画の興収は2020年に340.1億円、2021年に335.5億円で、前年までの3分の1以下になった。この2年の理由は、映連の表には書かれておらず、この記事では確かめていない。

金額は名目。 物価の補正はしていない。映連の過去データでは、平均入場料金は2000年が1,262円、2025年が1,454円である。

邦画・洋画の区分。 区分の定義(製作国など)は、この記事では確認していない。映連の区分のまま使った。

まとめ

  • 洋画の公開本数は、2000〜2004年の年346.4本から2020〜2025年の年526.8本に増えていて、シェアの低下を本数の減少では説明できない。
  • 洋画の1本あたり興収は3.75億円から1.03億円に下がった。計算上、1本あたりを基準に戻すとシェアは基準に近づき、本数を戻すとかえって下がる。編集部の予想(本数より1本あたりの低下のほうが大きい)は支持された。
  • 洋画の1本あたりの低下は、10億円を超える洋画が年29.8本から10.3本に減ったこと、10億円未満の洋画が増えて薄まったことの両方から成り、金額では前者が大半を占める。
  • 邦画は本数が約2.1倍になったが、1本あたりは2.13〜2.53億円の間で、ほぼ横ばいだった。
  • 大ヒット作を除いても向きは変わらない。公開本数の数え方の注記は見つからず、確かめていない。

付録: 年別の値

本数・興収は映連「過去データ一覧」の値。1本あたりは興収÷本数で、自分で作った値(億円、小数第2位まで)。興収は百万円単位の値を億円にした。

年 洋画 本数 洋画 興収(億円) 洋画 1本あたり(億円) 邦画 本数 邦画 興収(億円) 邦画 1本あたり(億円) 洋画シェア
2000 362 1,165.3 3.22 282 543.3 1.93 68.2%
2001 349 1,220.1 3.50 281 781.4 2.78 61.0%
2002 347 1,434.9 4.14 293 532.9 1.82 72.9%
2003 335 1,361.3 4.06 287 671.2 2.34 67.0%
2004 339 1,318.6 3.89 310 790.5 2.55 62.5%
2005 375 1,163.8 3.10 356 817.8 2.30 58.7%
2006 404 949.9 2.35 417 1,079.4 2.59 46.8%
2007 403 1,038.0 2.58 407 946.5 2.33 52.3%
2008 388 789.8 2.04 418 1,158.6 2.77 40.5%
2009 314 887.3 2.83 448 1,173.1 2.62 43.1%
2010 308 1,025.2 3.33 408 1,182.2 2.90 46.4%
2011 358 816.7 2.28 441 995.3 2.26 45.1%
2012 429 670.1 1.56 554 1,281.8 2.31 34.3%
2013 526 765.5 1.46 591 1,176.8 1.99 39.4%
2014 569 863.2 1.52 615 1,207.2 1.96 41.7%
2015 555 967.5 1.74 581 1,203.7 2.07 44.6%
2016 539 869.0 1.61 610 1,486.1 2.44 36.9%
2017 593 1,030.9 1.74 594 1,254.8 2.11 45.1%
2018 579 1,004.8 1.74 613 1,220.3 1.99 45.2%
2019 589 1,189.9 2.02 689 1,421.9 2.06 45.6%
2020 511 340.1 0.67 506 1,092.8 2.16 23.7%
2021 469 335.5 0.72 490 1,283.4 2.62 20.7%
2022 509 665.3 1.31 634 1,465.8 2.31 31.2%
2023 556 733.0 1.32 676 1,481.8 2.19 33.1%
2024 505 511.8 1.01 685 1,558.0 2.27 24.7%
2025 611 668.8 1.09 694 2,075.7 2.99 24.4%

出典